令和元年度卒業生・修了生への学長祝辞が掲載されました。

卒業生・修了生への祝辞

                                    宇部フロンティア大学

                                    宇部フロンティア大学短期大学部

                                           学長 長坂祐二

 

 卒業生・修了生の皆さん、ご卒業おめでとございます。また、ご家族や関係者の皆さんにも心よりお祝い申し上げます。

 今年は新型コロナウイルス感染症の拡大防止の取組の一貫として卒業式の挙行を断念せざるを得ませんでした。この感染症の特徴として、高齢者や基礎疾患を有する人の致死率が高い一方で、感染していても軽症あるいは無症状の人がかなりの割合で存在することがわかっています。そしてこの特徴が、感染を拡大させるクラスター形成の原因になっていると推測されています。卒業生の皆さんはこれからそれぞれの就職先や進学先で、新たに多くの人と出会うことになります。一生に一度の大学・短大の卒業式を中止することは断腸の思いですが、国を挙げて展開されている感染拡大防止の取組に協力し、クラスター形成を抑制して重症化する可能性が高い人への感染リスクを最小限に抑えるための手段としてやむおえない選択であったことをご理解くださいますようお願いします。

 さて、皆さんは、本学で多くのことを学び、将来役に立つ能力を身につけてこられました。学びは、教室の中だけ行われたのではありません。地域でのフィールドワークや臨地実習など地域の皆さんとのふれあい、大学祭、サークル活動、ボランティア活動など、正課外の活動も含めて、皆さんが在学中に体験したすべてが、現在の皆さんを作り上げた「学びの場」であったと思います。それらを振り返った時、日々の大学生活の中で積み重ねてきた貴重な経験を通して、学問的にも、人間的にも大きく成長を遂げたことを実感しているのではないでしょうか。これから皆さんは、母校を巣立ち、それぞれの進路に進み、新しい場所で挑戦し、活躍されることでしょう。しかし、必ずしも順風満帆とはいかず、さまざまな困難に直面することもあると思います。ともすれば理不尽な場面に出会うこともあるでしょう。そのような時は、在学中の経験や様々な人との交流を通して、学び、身につけたことに自信と誇りをもち、そして勇気をもって困難に立ち向かって下さい。

 新しいことや困難に挑戦し、目的を達成するためには、「生涯学び続ける態度」が必要です。学びには3つの段階があります。「これを知る者はこれを好む者にしかず。これを好む者はこれを楽しむ者にしかず」という言葉があります。これは、「学び」を深めていく段階を示したものです。「これを知る者」とは、知識を得る段階です。この段階は、その知識がどのように役に立つのかわからないために、知識を得ることに多少の我慢や努力が必要な段階です。大学に入学し、教養科目や専門科目を学び始めた段階です。このような学びを続けてある程度知識がついてくると、学ぶことの意味が分かってきて「もっと知りたい」という欲求が出てきます。この段階では、学ぶことが好きになり、知識を獲得するための我慢や努力が苦にならなくなる段階です。これが「好む者」の段階で、大学の上級生が到達する段階です。さらに、学びが進み、それが職業になれば、「学ぶ」ということさえ意識することがなくなり、知識を得たり、それを活用したりすることが、日常生活の一部になります。そしてそのような段階では、学ぶこと自体が人生の楽しみや生きがいとなる「楽しむ者」の段階です。皆さんの「学び」は、今、どの段階まで進んだでしょうか。卒業はゴールではなくスタートです。ますます多様化、複雑化する社会に船出する皆さんが想定外の事態に遭遇する機会が多々あると思います。そのような時に、新たなことや困難に挑戦する気持ち続け、新たな職場や環境を受入れ、適応して生き抜き、そして「楽しむ者」になるために、「一生学び続ける態度」を身につけてください。

 人生に無駄なことは何一つありません。一見無駄だと思うことに遭遇した場合、そのプロセスに誠実に向き合い、楽しむ心の余裕を持つことが大切です。それが、一見無駄だと思えることを、「人生の意味」に切り替え、人生を豊かにするコツだと思います。どうか、本学で学んだことを糧にして、前向きに、楽しみながら、一人ひとりの人生を紡ぐ旅に出て下さい。そして、時には母校に帰ってきて、新たな積み重ねた経験を聞かせて下さい。さらに成長した皆さんとお会いできる日を楽しみにしています。

 終わりに、卒業生の皆さんとそのご家族、関係者の皆さんのご多幸とご活躍を心よりお祈り申し上げ餞の言葉とします。

 

令和二年三月十九日